Germany: Europe's Growth Engine
佐藤 たとえば、いまミュンヘンのレストランでビールとシュニッツェル(カツレツ)を注文するとしましょう。おそらく、店の経営者はドイツ人、清掃係はかなりの確率でチェコ人かハンガリー人。カツに使われているブタ肉はハンガリーから輸入され、その養豚場で働いているのはウクライナ人で、ブタの餌もウクライナから来ているはずです。ドイツは二度の大戦では敗れましたが、欧州ではドイツ人を頂点とするシステムを作り上げた。ユーロという”拡大マルク”の力によって、第一次世界大戦時にドイツ帝国の皇帝が軍事力で、第二次大戦時にナチスが人種主義と軍事力で実現しようとしたことが、現在のドイツで実現できているのではないか、と定義しているのです。
定義している、というのは英国の経済史家ホブズボームがそう言っている、ということらしい。(「ボブズボーム」と誤記されているのは残念)。もとの本は明示されていないが、邦訳本を念頭に置いて言っているのだろう。
ドイツ語の重要性は、かつてないほど上がっているのではないかという気がする。むろんドイツ人の知識人の多くは英語を話すし、英語メディアでもドイツのことは知ることができるが、ドイツメディアでしか判らないことも多いだろう。
十八,九から勉強を始めていれば、外国語三つを自在に操るというのはあながち不可能じゃないのだが、その時期を空費しちゃうと、つらい。ヨーロッパ大陸のことも英語・ロシア語をとおして透かし見るだけ、という状態が、これからも続く。
勤めていたころ、経済の先生というのが勤務先に何人もいたが、ドイツ語を読んでいるという先生は、ひとりいたかな。一緒に読書会をやるような機会はついになかった。
勤務先によって研究テーマを変える、増やす、といったことはあってもよく、自分の場合だと、英語、ロシア語、そしてひょっとしたらドイツ語を使って、思想史や経済学史のあちこちを発掘するお手伝いというのなら、できなくもなかったと思うことがある。昔のことで、今となってはどうでもよいこと。経済の教授らはぼくにはもっぱら無関心で、いいように利用されなかったのはむしろ幸いだった。ホブズボームなどは、あくまで自分の教養の幅を広げる意味でのみ、読んでみたい。
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