俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

Rocket to Russia

 あの時ああすればよかった、こうすればよかった…と臍をかんで毎日を過ごすというのは好きじゃありません。クラシックの素養がないことを嘆くようなことを書きましたが、今生のこの自分が行きがかり上そういうふうになってしまったのは、もはや取り返しがつかぬこと。取り返しはつかないけれど、やり直しは案外効くものなのですよ。
 でもって、500円クラシックというCDのシリーズを何枚か買ってきて聴いています。チャイコフスキーの巻なんかもう最近のヘビーローテーションで、このメロディは「くるみ割り人形」の「花のワルツ」だったのか! とかこれは「弦楽セレナード ハ長調」というのか! とか、とにかく発見の連続。小学生みたいで恥ずかしいですが、「聞くは一時の恥」の喩えもあります。これから研究に生かそうなどと考えるなら追いつく話ではないですが、そうまでしようというんじゃないんです。知らぬまま死んでしまうよりは遙かにましではないですか。あたまの中の/心の中の風通しがずいぶんよくなりました。
 どんなに博識な人にでも、この種の教養の欠落は必ずあると思います。樹木希林さんはかつて『ニューミュージックマガジン』(まだ「ニュー」がついていたころ)のビートルズ特集で、このチラチラするメロディなあに? と尋ねて内田祐也御大に「イエスタディ」も知らないなんて、気取ってるんじゃねえ! と叱られた、みたいなことをお書きになっていた記憶がありますが、これが実話なら、腹を立てる祐也さんの方がいけないと思います。こういう場合は、ビートルズの赤盤と青盤というのを貸してやるから聴いてみろよ、是非感想教えてくれよ、というのが正しいんじゃないかなあ。
 他人の無知をあざ笑う人に囲まれて育つと、これぼく知りません、何ですか? という何でもないひとことが言えない人間になります。そういう人間同士が集まると、ものを知らない同士で空威張りと知ったかぶりの応酬をするという目も当てられない悲惨なことになります。
 ある研究会の後の懇親会で、ラモーンズの『Rocket to Russia』を取り出して眺めていたら、斯界の大先生が席を移ってきて「レイモンズ?」と尋ねるので「ラモーンズです」と教えてあげたことがあります。スラヴ文学の大家がパンクロックを知らなくても不思議はないんですが、どんな博識な人にも何らかの教養の欠落はあるものだ、と何となく感じたのはそのときかなあ。ぼくがあんな大先生に何か教えてあげることがあったなんて、なんだか今となっては信じられないですけどね。

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 これも5,6年前に書いてポメラの中で眠っていた。ちょっとさらしとく。

 このところ、スタンドアローンインターネットラジオを買うか買うまいか思案中。パソコンが二台あり、タブレット端末があり、iPod touchがあって、それでふだんはトークレディオなど聴いているから、不自由はないのだけれど。


ROCKET TO RUSSIA 13-Surfin' Bird - Ramones Bass Cover