俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

弦楽セレナーデ~階層社会では上位にたどりつけるのは「いい人」だけ

 「嫌なやつ」は社会的に上昇できないんです。階層社会では上位にたどりつけるのは「いい人」だけなんです。「知らないことを知らないと言える人」「他人の仕事まで黙ってやる人」「他人の失敗を責めない人」だけが、相互支援・相互扶助のネットワークに呼び入れられて、そこでさまざまな支援を受けることができる。

 

街場の共同体論

街場の共同体論

 

  いやあここまではっきり書かれると、ぐうの音も出ない。メディアが不寛容をあおり、下層の人びとをクレーマー体質にすることによって、ますます下層化させている、という文脈での一節だけれど、党派を問わず、上層の人は自己主張が控えめで感じのいい人が多い、との記述もある。これは、以前も引用したが、

  結局、人は自分の身近にいて、よく知っており好感を持った相手にしか、手を差し伸べてはくれない。

 

 

資格を取ると貧乏になります (新潮新書)

資格を取ると貧乏になります (新潮新書)

 

  というのと、ほぼ同じことを言っているのだろう。こうして上流の人が公式・非公式のネットワークでつながって親しげに群れ集っている様子は、

「仲間はずれ」になることは最大の恐怖であり、そのせいかだれもかれもが互助会のように群れつどい、[…]

 

自分をつくるための読書術 (ちくま新書)

自分をつくるための読書術 (ちくま新書)

 

  という風にきびしく批判されたりもするのだが、ここまで厳しくなれる人は例外で、やはり、うらやましいと思う人が多いだろうな。

 ぼくはもうそうしたネットワークからだいぶ外れた人生を送っているけれど、去年、今年と大学の内部の身分をほんの数日間与えられて、電子ロックのかかった非常勤研究員室にデスクをもらって、一般人の入れない図書館の書庫で洋書を見たりしたときは、こういう静かで穏やかな環境でずっと過ごせる人たちに羨望を禁じ得なかったのは確かだ。

 内田先生の本は、他のを何冊か読んで、この人の言うことはだいたいわかった…という気がしていたけれど、この『街場の共同体論』の読み応えはまたひとしおだった。返却に行こう。


Tchaikovsky Serenade for Strings in C major, Op. 48 チャイコフスキー 弦楽セレナーデ