俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

いなせなロコモーション

「外国語が出来るというても、ぐじゃぐじゃ何を言うているのかわからぬような外国語でなければ駄目だ。我々の英語はビジネスには役に立つが、その他のことには役立たぬ。ぐじゃぐじゃ何を言うているのかわからぬような家庭の言葉が出来なければ、本当に打解けた話は出来ない。それは団のように、子供の自分に外国へ行って外国の家庭で育った人でなければ出来ない」(『自叙益田孝翁伝』)

 

 

 孫引きだが、気になったので拾っておく。本自体も、手軽な新書ながら、なかなか面白かった。

 益田孝は三井物産社長、「団」は団琢磨をさし、益田に見いだされ、のちに三井の頂点に立つ人。  

 明治の時代の事情に照らして、子供のころ外国へ行き、外国の家庭で育たなければ、インフォーマルな口語英語に完全に通ずることはできない、と結論が出ているのは、それはそれでよいだろう。

 で、「外国語が出来るというても、ぐじゃぐじゃ何を言うているのかわからぬような外国語でなければ駄目だ」という部分。

 外国語教員として勤めていた時、「字幕なしに洋画が観られるんでしょ」といった感心のされ方をされるのが一番こまった。日本じゅうの英語その他の外国語教師の中で、担当外国語の映画をスクリプトなしで完璧に聞き取れるという人が、一体どれくらいいるだろうか。

 ピーター・バラカン氏もかつてローリング・ストーンズの『メインストリームのならず者』からの曲をかけながら、「ぼくもイギリス人ですけど、何を歌っているかは半分もわかりません」と言っていた。

 ここでは英語を例にするが、まず、標準的に平易にしゃべっている英語を聞き取れるようにするのが、ふつうの学習者には、いちばん実があって役に立つんじゃないか。平日の午後四時からNHK-BSの1でやっているアメリカPBSのニュース(火~金)。あれは公共放送で、アナウンサーが標準英語をしゃべってくれるし、聴覚障碍者用に字幕も出る。あれをわかるようになれば、日本でのふつうの人の英語学習としては、たいしたものだ。

 それ以上のレベルは、ぼくにはわからない。PBSのあと、ABCナイトラインというのが放送され、そちらは往々にして「ぐじゃぐじゃ何を言うているのかわからぬ」状態になる。でも、あまりがっかりはしない。これ以上はたしかに、英語国に一定期間住むなどの機会があるかどうかで大きく違うだろう。

 そこまでいかずとも、英語ニュースがわかるくらいにはなれるし、多くの学習者には、それで十分すぎるくらいではないだろうか。


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