Everybody Loves to Cha Cha Cha
ドイツは申し分なくエゴイスティックな戦略で自由貿易に適応しましたよ。国内産業の工場を部分的にユーロ圏の外に移転し、フランス、イタリア、スペインに対して競争的なディスインフレ政策を実施し、それからユーロ圏を丸ごと捕獲した市場のように使って、そこから巨額の貿易黒字を生み出したのです。この交易戦略は─クラセヴィッツの『戦争論』に倣っていえば─別の手段をもってする権威主義的・不平等主義的伝統の継続です。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書)
- 作者: エマニュエル・トッド,堀茂樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/05/20
- メディア: 新書
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昨日も書いたが、めったに入らない新古本屋の、投げ売りの新書本コーナーに強烈な場末感を感じたというのは、その、数年前ピカピカの新刊として刊行された最新知見満載をうたった本たちの放つ、なんというか〈年経た感じ〉のなせる業であって、思えば場末を彷徨するという楽しみの過半は、ふらりと入った知らない古本屋などでそうした中途半端に古い本なりレンタル落ちCDなりをあさる楽しみであって、エレファント・カシマシの「うつらうつら」が入ったやつとか、サム・クックのベスト盤とか、オーウェルのエッセイ集とか、そうして見つけたのだった。誰かが身辺整理のため捨てていった情報の集積された(集積としての)場末。
いまはパソコンがネットにつながり、日々その中をさまよっているのであるが、それなどはまさに数年前に更新の止まったブログの読書ノートなどに行き当たるときの、寂しいような発見がよろこびだったりするのである。
エマニュエル・トッドのこの本は、きのうも書いた通り、国際政治の激変にさらされてすでに少しずつ古くなりつつあり、あと数年もすれば、上記の新古本屋でただ同然でならんでいるであろう。その時まで待って買うというのもあながち無意味とは言わないが、やはり今読んだ方がリアリティがあるだろう。数年前から報じられていた通り、南ヨーロッパの諸国の財政危機はドイツの貿易黒字とリンクし、要するにドイツのひとり勝ちとうらおもての関係にある。難民の流入というファクターが加わった今は、ドイツと南欧諸国の関係は、もっと複雑化しつつあるだろう。〈情報の場末〉ということがこの連休の思いがけない発見だった。
Sam Cooke - Everybody Loves to Cha Cha Cha