俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

勇者指令ダグオン

「いいか、君たち。これからの人生のどこかでかならず苦難が振り掛かってくる。そうしたら、『へへっ、面白くなってきやがった』というぐらいの気持ちで 、堂々とそれに立ち向かっていきなさい」[…]

 

努力論 決定版 (中公文庫)

努力論 決定版 (中公文庫)

 

  四月も終わる。

 先日、気まぐれに入った新古本屋で買ったのはちくま新書版。上にリンクを張った中公文庫版じゃない。だから、この一節が上の文庫版にあるかどうか確かめていないんだけれど、上の一節がほんと、はっとするほど新鮮。

 著者はもちろん東大の英語の先生で、タイトルに「英語」が入らない本はこれが初めて、とあとがきにある。著者が書いた英語学習についての本は今まで何冊も読んできたし、だから、その延長に努力の大切さを説いた本があっても別に不思議に思わない。

 ただ、本書が、成功者による紋切り型の「努力必要論」に過ぎないかと言えば、それは少し違う。いや、著者が説くところは「努力必要論」に違いないんだけれど、安全地帯から公式論を述べている…といった感じとも異なる。この人にはもっと常軌を逸したものへのあこがれがあるんじゃないのか。とにかく、様々な分野の達人の超人的な自己練磨が紹介され、それがいちいちすさまじい例ばかりなので圧倒される。著者は将棋マニアなのだな、最初のほうはその種の話が多い。かと思うと、これは実は有名なのかもしれないが、斎藤先生、漫画家を志した時期があったり、ロックバンドのドラム演奏が得意だったり、合気道の練習に通う話が出てきたり、そういう横顔の垣間見えるところが面白い。

 そうして、上の一節は、著者の高校時代、外部から招かれて講演をした人の話という。講演者の名前も題目も忘れてしまったが、その人が最後に語った教訓が「妙に脳裏に焼き付いており、その後も私を励まし続けた」。これだ。

 人に降りかかってくる苦難は人それぞれだから、そのいちいちに先回りして処方箋を出してやる、といったことは教師にはできない。ただ、どんな人にも、病気とか、失業とか、親しい人の死とかがふりかかってくる可能性は常に大いにある、ということは、若い人に教えておく。そして、今のうちに、よく食べよく眠れる頑健な心身を鍛えておくがいいぜ、人間関係の滑ったころんだも、うんとやっておくといいぜ、と言っておく。いざそういう危機が来たら、うろたえず、どんとこいと構えること。これもあまり振りかぶらず、さりげなく言っておく。ぼくのような非力な語学教師にも、心がけ次第で、それくらいのことはできただろう。

 そういうおおらかで肯定的な人生観を学ぶのに、アニソンなんか案外悪くない教材だ。いや、ぼくはほとんど知らないんだけれど、今日はNHK-FMで朝の9時からこんなのばっかりやってる。心に風を入れるため、つけっぱにして、聴きながらガシガシ勉強してる。


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