I'm not my brother's keeper
どんな神話、どんな文化的元型でも、自分では理解できないまま恣意的に不利な立場に立たされるカイン的人物が登場する場合、その人物は必ずアベル的人物を探し当てるものである。
- 作者: ジョージ・スタイナー,伊藤誓,磯山甚一,大島由紀夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2009/09/19
- メディア: 単行本
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旧約聖書のカインとアベルのお話を踏まえて映画『エデンの東』が作られたのは有名。どんなに努力しても父に喜んでもらえない、愛されない兄を、ジェームズ・ディーンが演じていたのは憶えているんだけれど、DVD-Rの山を探さなければ出てこない。
神の寵愛を受けられないカインは、アベルを妬んで殺めてしまう。アベルがいないのに気づいた神はカインに「アベルはどうしたか?」と尋ねるのだけれど、「別に俺は兄弟の番人じゃないですから」と口答えをする。そんな話だよな。
高校時代、お金もないのに輸入レコード道楽にあこがれて、大阪のレコード店から、ソウル・レーベル「ホット・ワックス」のオムニバスLPを取り寄せたことがあった。いい曲ばかりで素晴らしかったけれど、その中の一曲が"I'm not my brother's keeper"だった。そうやって聖書の故事は、英語文化の骨格をなしていることを少し垣間見た、と言いたいんだけれど、当時はカインとアベルの話、知らなかった。大学院生になって、たしかロシアの詩人バラティンスキーの経歴を読む授業で、「カインの烙印」という言葉が出てきて、先生が説明してくれたんじゃなかったか。兄弟殺し≒犯罪者一般の烙印、という意味だったような。
妬み? 語学にまつわる局面では、いろいろあるな。妬んだり、妬まれたり。ああつまらん話、と自分でも思う。そんなヒマがあったら、きみもぼくも、一頁でも多く新聞なり原書なりを読むべし。そうじゃないですか。
夏用のジャケット、一万円しない安いのを注文。今持っているのでも着られるのだけれど。