Virtual Insanity
The Moon and Sixpence (Dover Thrift Editions)
- 作者: W. Somerset Maugham
- 出版社/メーカー: Dover Publications
- 発売日: 2006/01/20
- メディア: ペーパーバック
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Words from The Moon and Sixpence by W. Somerset Maugham: an English Dictionary (English Edition)
- 作者: Lucas Nicolato
- 発売日: 2016/02/15
- メディア: Kindle版
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モームは純文学というより大衆作家なのだろう。とても読みやすい。たしかに語彙は百年ほど前の大人の英語の語彙だが、構文が取れないという箇所はない。
これは芸術についての小説であるとともに性愛についての小説でもあり、同時に海洋冒険小説でもあり、エキゾチックな文物についての小説でもある。二月、日あしが伸びて、雪どけの前触れが感じられるさなかにこれを読んだのは、とてもよい思いつきだった。
英語の本への焼けつくような渇きは、どうにもならない。去年の今頃はウェルズやエドワード・ベラミ、ドイルやオーウェルを読んでいた。ことしは衝動的に、これを書棚から引き抜いた。古本で買ったのは間違いないけど、どこで買ったか。裏表紙に「二〇〇円」の鉛筆書き。
平凡な株の仲買人が、家族を捨て、とつじょ絵描きになる。その機微はとうてい常識でおしはかることができるものではない。パリに隠棲する画家ストリックランドは情欲のおもむくままに、恩人ともいうべき凡庸(だが善良)な絵描きの妻の性的本能を目覚めさせてしまい、死に追いやる。そして貧窮の果てに流れ着くタヒチ。そこでの生計は、ストリックランドが白人であるという一点においてかろうじて成り立っているという意味で、やっぱりこれはコロニアリズム小説でもあるんだろう。そのへん、ぼくは英文学者じゃないから知らない。
でもどうだろう、世界の始原を垣間見て死んでゆく主人公ストリックランドの、生のまばゆさ。芸術がこういうもんだとしたら、芸術にかぶれた若者の多くがグレてしまうのは、ある意味すごく当たり前だという気もする。
午後四時。まだ明るい。そう、日暮れは近いのだろうが、まだ明るい。
暗い自室で読んでばかりいるのもなんなので、コーヒー屋さんに行ってこれ読んでたのだよ。いまの身分じゃ外で飲むコーヒー代も高いから、月に一、二度の贅沢なんだね。そしたら、ジャミロクワイのあの曲のカヴァーが流れた。歌ってたのは女性。ちょっと古いフュージョン風のアレンジ。なんか、やけに心にしみた。探したけど動画は見つからない。
Lyrickal performs ‘Virtual Insanity’ - The Voice UK 2016: Blind Auditions 1