星の世界
小学校の一年の夏休み。動物園へ行った。汽車に乗り、父母に連れられ、妹と一緒に。
父も母も中学しか出ていない田舎者で、街へ出てもバスの乗り方もわからない。バスターミナルの窓口で、父と母が一生けんめい、動物園へ行くにはどの路線のバスに乗ればいいのか、尋ねていた。
どんな動物を見たのかは、もう覚えていない。ただ、あの時の父と母の姿だけはっきり覚えている。きのうのことのようだ。
そう、あと、動物園を見終えたあと、どこか食堂へ入り、ラーメンを食べたとき、テーブルに焼き肉用のガス台みたいなのがついていたこととか、妹が帰りに疲れてパンダのぬいぐるみを抱えたまま、汽車の中でぐっすり眠ってしまったこととか。
このことは死ぬまで覚えているだろう。