俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

土曜日のたまねぎ

[…]たとえば干魚や塩漬けなどでも、新鮮な魚を海から遠い土地でいかにうまく食べるか、という工夫で作られたもの。京都ではまさに「お造り」という言葉で伝えているし、海の近くなら、なおのこと、ぼくは刺身はむしろ、ご飯と一緒に食べる方がおいしいと思っている。

 

生キ残レ少年少女。 (岩波現代文庫)

生キ残レ少年少女。 (岩波現代文庫)

 

  我が意を得た一節。炊きたてのご飯とお刺身は合う、と自分も思う。大学院生のころ、寮で、工学部の院生が日曜になるとお刺身定食弁当みたいなのをどこからか買ってきて食べていた。ああ、おいしそうだなあ、とよだれが出たことが思い出される。

 五年前、研究室を引き払う直前も、一時期、刺身を買ってきては炊きたてのご飯のおかずにしていた。酒は一緒に飲まない、というか、もうその時は一滴も飲まなくなっていて、ひと缶36円のお茶を飲んでいた思い出が。もう引き払ってしまったあのマンション。海と川の匂いがした。

 年末、いつも父方の親戚から新鮮なホタテが届く。父がいなくなって久しいし、もう今年はないかな…と思っていたら、今日届いた。ご飯を炊いて、ホタテの刺身をおかずにして食べる。

 この文庫は、米作りを守れと訴え続けた御大の主張がよくわかる一冊。平成元年くらいの時局がわかっていないとピンと来ない面もあるが、そのころのことは、当方も昨日のことのように覚えているから大丈夫。これも御大の置き土産。


斉藤由貴 / 土曜日のたまねぎ