俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ジョンとヨーコのクリスマス

 小説誌ゲラ了。小説ではことさら昔の文体をなぞっている、愚の骨頂。

 

妄想老人日記 (中公文庫)

妄想老人日記 (中公文庫)

 

  ああこの人にしてそうか、と唸る一節。万事が波に乗っていたころというのはこの自分にもあり、いつかそのころの自分をなぞることに必死になっていることに気づいて愕然としたという覚えはなるほどある。まして御大は文体の人、文体はまねしやすく、そのまねしやすいというのは安易なパロディならだれにでも書けるということであって、その精華・精髄となると話はまったく別。一般に、心身に脂の乗り切った時の芸術家の真骨頂を再現して見せるということは当の芸術家自身にさえ難しく、自己模倣はただ何となくノラねえなという感じしか与えずに終わる。この『日記』じたいにもそういう面はあるのだろうが、老残と自堕落さを隠そうともしない率直な書きぶりがむしろ吉と出て、たいへん濃厚な読みごたえがある。大いに参考になった。

 昨年も書いた気はするが、冬至天皇誕生日/降誕祭…正月と続くこの時期は、平日の人である自分にとってはその平日の大いなる中断の気味があり、いささかつらいことはつらいのだ。しかし人が笑って通る角は笑って通れともいう。ジョン・レノンを繰り返し聴く。オノ・ヨーコよりやや年長年少の老母が、外で雪かきをしている。


John Lennon - Happy Xmas (War Is Over)