カール・ポランニーの経済学入門
機械使用のための決定的条件は、社会の自然的実在と人間的実在、つまり自然と労働を商品に転化し、これらの生産要素を市場で購入できる商品に「転換」させることである。また、社会構成員の行動動機が生存動機から利得動機に変化すること、さらに、あらゆる所得が販売から生じるようになることが必要である。すなわち、機械を生産に使用するには市場社会が生み出されなければならないのである。商業社会において機械を生産に用いた産業革命は、財の生産と分配における秩序が価格の自動調整作用に委ねられる「自己調整的市場 (self-regulating market)」というまったく新しい制度的メカニズムの作動を要請したのである。ポランニーが注意を喚起しているのは、産業革命に適合的な市場経済システムは交換と商業の発達を通して自生的に生み出されたのではなく、後に見るように、新救貧法の制定による労働市場の創出に見られるような、国家の経済自由主義的介入によって意識的に創出された、という点である。
カール・ポランニーの経済学入門: ポスト新自由主義時代の思想 (平凡社新書)
- 作者: 若森みどり
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2015/08/13
- メディア: 新書
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八〇年代の流行でしょ、ポランニーって、と、思う向きもあるかとは思うんですが、少なくともぼくはポランニーの『大転換』は、いつか読もうと英語版も買って持っています。だから、書評のページの片隅に小さくこの本が紹介されていた時はあっと思いました。
先日来書いている石川美子『ロラン・バルト』と一緒に注文。どっちか一方にしようかと思ったんですが、どちらも捨てられずに、という感じ。こちらを先に読み始めましたが、あとから手に取ったバルト本の方が読みやすく、そちらを読了。こちらは昨日からつらつら読んでいます。
子供時代の思い入れの清算、と言われればその通りとしか言いようがありませんが、読まずにいられない。社会に埋め込まれていた経済が離床し、労働、土地、貨幣までもが擬制商品として市場での取引の対象となり、人間とその社会が市場経済の付属物であるかのようになっていくプロセス。栗本先生の本で大体のアウトラインはわかっているつもりでしたが、要点を押さえつつきっちり書いてあります。
読みながら、この三十五年を振り返る。
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ところで、川を見に行きました。春や、秋の川が好きでしょうがない。もともとは地学とか大好きだったし、河原で石ころを拾ってくる、とか、来年の夏はそうやって過ごしてもいいと思う冬の始め。雪。