赤色エレジー
一九五三年に祖母ノエミが亡くなってからつづいていた遺産相続の問題も、二年をかけて、ようやく一九五五年春に解決した。手にした遺産で、バルトたちは住み慣れたセルヴァンドニ通りにアパルトマンを買うことができた。六階のアパルトマンと、その真上の屋根裏部屋を買い、屋根裏部屋をバルトの書斎にすることにした。そして工事をして、下階のアパルトマンと屋根裏部屋とを揚げ戸とはしごとで結ぶようにした。すると外の廊下と階段をつかわずに移動ができるようになり、仕事は屋根裏部屋で、食事やおしゃべりは六階で、と気楽な独立性をたもつことが出来た。こうしてバルトははじめて、自分の書斎を持ったのである。
ロラン・バルト -言語を愛し恐れつづけた批評家 (中公新書)
- 作者: 石川美子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2015/09/24
- メディア: 新書
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いい本だった。二晩で読みました。
バルトが結婚せず、母親と暮らしていたのは有名な話。そういう面も、よく描かれていて面白かった。
勉強に集中するためには、ふと飽きたとき、疲れたとき、話のできる茶の間と家族を持っているかどうかが、とっても大事です。そういう環境があれば、わびしい・さびしい思いをせず、読書や執筆に集中できます。結婚している人の学問の伸びかたって、やっぱりそういう環境に支えられている面が大きいと思いますよ。後顧の憂いなく、と言いますけど、あれは真実。
自分をバルトや寺山修司になぞらえるつもりはないですが、母親と住む知識人、というのもたまに聞く話です。だから、がっかりすることはないんです。仕事は屋根裏部屋、食事やおしゃべりはお茶の間、というくだりが、何ともうらやましいですね。
赤色エレジー あがた森魚 (2009年11月22日収録ライブ動画・歌詞字幕入り ...