枯葉
十一月四日 戦地から弟が来た。法学士で今は重砲兵の少尉である。そしてこんな話をした──
「どうだ、リガ市の退却のときにはひどい目に逢ったろう」
「エエひどかったけれど、それはたいしたことではありません。われわれはよく退却したことがありますが、兄さん、今度は露西亜の陸軍はだめになってしまいました。兵卒は戦争をしたくない、規律が乱れるどころのはなしじゃない、規律がさっぱりない、兵士は平和のこととか土地配分のことばかり論じています。私たちが何か言うと向うは君はメンシェヴィクであるとか、あるいはブルジョアとか言います。かれらは終始『塹壕のプラウダ』という過激派の新聞を読んでいますが、あの新聞は独逸で印刷されているので、活字の間違いと変な文章でそれがすぐわかります。あの状態ではもうとても戦争は続きやしません。私は南に行きたい[…]
内容はともかく、これをエリセーエフは日本語で書いたのだと思うと、頭が下がります。危機的状況を描きながら、妙に滋味あふれる文章。文体的に統一がとれているのが素晴らしいと思う。自分がこんな自然で流れるようなロシア語を書けるようになるまで、あと一体何年かかるだろう。
秋晴れの日に。昨日は戴きもののミョウガがおいしかった。
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坂田氏↓、北海道ツアー中なのですな。もっと早く知ってれば、どこかの会場に行けただろうが…ジム・オルークが一緒か。聴きたかった。
枯葉 坂田明4 (AUDIO ONLY) - YouTube