俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

さよならの夏

 貧乏にまつわるさびしい思い出は、いくつもいくつもありますね。ほんの10何年前くらいにも、我が家にこんなことが。

 夏祭りで、ここらはもうテキ屋さんを入れず、地元商店が店を出していたのですよ。そのうちの文房具店の出店で、老母が二人いる孫の下の方(ぼくにとっては下の姪)に、ビニール製のお馬さんを買ってあげたのです。下に車輪がついていて、息を吹き込んで本体をふくらませて、ひもで引っ張って遊ぶような。お祭りだから、特価なんだろうけど、千円くらいしたと思う。

 姪はおおよろこびで、お馬さんを引っ張って遊んでいたのですが、ふくらませても、しばらくするとしぼんでくるんですよ。よく見ると、どこかから空気が漏れてるらしい。老母は一生けんめい、ビニールテープを張って修理しましたが、地元の老舗がふつうお祭りで売りますかそんな不良品。その夏、姪がしぼみかけたお馬さんを大事そうに引いて遊んでいたのを、今も思い出すんですね。

 もちろん姪は元気に成長し、そんなことなんか、もう覚えていないだろう。でも、老母と下の姪が、ジャンケンをしながらだらだら坂を降りて、保育所行きのバス乗り場まで歩いて行ったあの夏。あの清冽なさみしさを、いつも、思い出します。


Teshima Aoi手嶌葵 / さよならの夏 ~コクリコ坂から~ - YouTube