俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ミスター・サマータイム

 もし本当に上手に外国語を読み書き話せるようになろうとしたら、正直に言って三年から五年はかかる。従って二つあるいは三つの言語がそういう状態にある人は、少なくとも一〇年近く語学の勉強をしている人ということになる。数多くの外国語ができる人でも、読み書き話せるという外国語は二つあるいは三つに過ぎない。

 

いろいろと数多く外国語ができる人がいても、その中で読み書き話せるという三拍子揃ってできる言語は一つか二つで、三つという人は少ない。

 

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)

 

 

  言わずと知れた千野先生の名著。若い人となかよくなるたびに進呈し、何冊買いなおしたかわかりません。何度も何度も暗記するほど読んで…

 あるとき、上記の二つの箇所に気づきました。わずか一ページに満たない間隔で、微妙にずれた二つの主張が並んでいます。三拍子、つまり読み書き話せる外国語はせいぜい二つか三つあればよい、と書いているすぐ後のところに、実は三つあるという人も少なくて、たいていは一つか二つだという記述。

 これに気づいたときはなんか新鮮でしたね。多言語習得を勧める本のたぐいはぼくも好きでずいぶん読んだけれど、あんまり手放しに多言語使用者であることの効用とかすばらしさとか歌い上げてる本は、あるときからあまり手に取らないようになりました。何年経っても、そうした著者さんたちと自分を重ね合わせていっときの快感に酔う、という繰り返しなので。

 まがりなりにも使える外国語は一つか二つでよい、というのなら、ぼくらの実感にもだいぶ近いです。ロシア語を専攻していればロシア語に熟達しなければならないのは当然。もうひとつは英語がかなりできないと、研究書も読めないし、いろんな場に出ていけない(そしてこれがまた底知れない深さ)。これですでに二つです。

 このほかにさらにポーランド語かチェコ語、あるいはフランス語かドイツ語が自由自在という人はよほどの努力家で、なおかつ学ぶ環境にも恵まれています。ふつうの大学では、ポーランド語やチェコ語を学ぶ機会って、まずありませんから。


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