俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

チェロ協奏曲ヘ長調

 当時、私は留年中であった。その留年の期間が終わるころになって大学紛争がいちばん激しくなり、私の方は自分個人の問題をかかえて動きがとれなくなっていた。プーシキンの詩のどこかに、「神よわが心を狂わせ給うな」という句があると思う。そんな句をつぶやきながらヤコブセンやクライストを読んでいた。その頃友人から、赤坂の草月会館裏手のゲーテ・インスティテュートの図書室を教えられた。静かな建物で、二階の図書室にもほとんど人の姿はなかった。オルテガも、バルトも、ゼードルマイヤーも、ノサックも、そしてロシア・フォルマリズムの批評も、この図書室から借り出して読んだ。時間は充分にあった。私は読書会とかサークル活動といった類いのものが本能的に嫌いで、自分に必要なところをタイプしてコレクションを作るのに熱中した。

 

書物の未来へ

書物の未来へ

 

 

  日曜の午後、書庫へ行って本探し。書庫といっても、ただのプレハブ、まわりはクローバーだらけという、そんなところですね。何を探していたかというと、この一節。

 ここに出てくる「ゲーテ・インスティテュートの図書室」。これって、以前のエントリーで引いた藤野寛さんがおっしゃっていた「ドイツ文化センター」と同じものなんでしょうけど。うらやましいなあ。

 もっともドイツ語ではなく英語文献ということだと、札幌の米領事館にアメリカ文化センターがあって、資料の閲覧ができる、と聞きますね。一度行きたいな。人文系(というくくり方もいい加減いやなんですが)の書物って、どれくらい置いてあるんでしょうか。法学部でアメリカ政治をやっている人が利用したり、という話はよく聞くのだけれど。

 今の自分がそうだというわけじゃないですが、夢に見るのは、パソコンを入れたリュック背負って、そういう場所を転々とする、自由で貧乏なワンダリング・スカラー。功成った学者 accomplished scholarというよりは半学者 quasi scholarくらいの,。

 夏至近く。晴れて日の長い、ミッドサマー・ウェザーのこの頃。


SOL GABETTA - Vivaldi, Concerto for Cello in F ...