俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

愛と誠

 当時、次のような考えも私の頭に浮かんだ。父は革命、内戦、および第二次世界大戦を生き抜き、レーニン主義スターリン主義、およびポスト・スターリン主義 の時代を通じてわが国の発展を体験した。父がどんな過ちを犯したにせよ、それはもはや何の意味もなかった。父は退任するまでの人生のすべてを国民共通の目的に捧げた。引退したいま、父は歴史を蘇らせ、自分が生きた時代を意義づけ、自分を継いだひとびとが無用な過ちに陥るのを防ぐために、その回想を役立てようとしている。これは社会にとって大きな利益になるだろう。なぜなら、過去についての知識なしには、未来について明確な展望を持つことはできないからだ。

 しかし、当局は歴史に関心を持たないだけでなく、われわれが回想録の作業をするのを責め立て、われわれを犯罪者扱いし、回想録を外国で出版される違法文書のように扱ったのだ。

 だが、父の回想録は疑いもなくソ連で最も重要な党の文書である。なぜそれを抑圧するのか。当時、私は適切な答えを思いつかなかった。現在でも、正直に言って、フルシチョフ回想録の出版は急がれていない。多くのひとびとがいまだに、歴史を必要としていない。少なくとも真実の歴史を。

 私が思い出さざるをえないのは、ジョージ・オーウェルの次のような警句だ。「過去を制するものは未来を制し、現在を制するものは過去を制する」。

 過去の書き換えをやめ、それをありのままに記述し、未来を築くために役立てるような時代は来ていないのだろうか。(セルゲイ・フルシチョフ『父フルシチョフ 解任と死 下』、福島正光訳、ウィリアム・トーブマン編、草思社、1991年、88~89頁)

 

 この一節の最後のほうに出てくるジョージ・オーウェルからの引用、たいへん気になりますが、出典を書いてくれていないので、何を読めばいいのでしょうかね。この、「~を制するものは~を制する」というのは、明らかに地政学の開祖、H・マッキンダーの「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」という論理/言い回しを踏襲しています。オーウェルのエッセイ集を頭から読んでいけば、どこかで出会うのでしょうか。また時間がかかりますね。いつまでたっても宿題が増え続けるばかり。四月は調子上がらず、一日おきに早起きと寝坊を繰り返しています。今朝も早朝起きられず。春眠暁を覚えず、という古い漢詩通りのような毎日。

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 前回書きました通り、北海道の春は寒く、荒々しく、川は雪どけ水で増水し、決して「春の小川はさらさら行くよ」的ではありません。昨日、町はずれまで、そんな増水した小川を見に行きました。むしろ東欧的とも言いたいような、そんな風景。あるいは、マイルス・デイヴィスの有名なアルバムジャケットなんかも思い出しますね。ようやく冬が終わったという感慨をいつまでもかみしめる四月。


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