シコ・ブアルキ『ブダペスト』
メモ代わりに。
けさ遅く起きて新聞のテレビ欄を見たら、フジ系のお昼のバラエティ『バイキング』に作曲家のN垣隆さんが出る、と知り、何となく見ました。すっかり吹っ切れちゃって、悪いしがらみを絶った安堵感みたいなものを感じます。でも、ひな壇で当惑した顔で座ってるこの人、どう見たって不器用で、タレントさん向きではないでしょうけど。
手もとのメモで確認すると、あの記者会見が2月5日。もう遠い過去のような気がしますが、もちろんまだ今年の出来事なのですよね。その翌日のワタクシのメモを読み返すと、こんなことが書いてあります。
「あるブログで読んだけど、N垣氏は現代音楽の硬直性に飽き飽きして、S村河内氏の名義でのびのび作曲したかったのではという側面がやはりあるように思える。上目づかいに差しだされるくすぐりに哄笑するしか能のないポストモダンな〈受け手〉たちの監視的なまなざしから自由なところで〈原リスナー〉と出会いたい、という素朴な欲求がどこかにあるのではないか」
いや、これ当たってないですね。それにもちろん、その時も今も、ワイドショーで報道される以上の事情をぼくは知らないし、こんなえらそーなこと書けるほど、現代音楽のこととか、創作の機微とか、知っているわけでもないのですよ。
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いま「ゴーストライター」と聞いて思い出すのは、N垣さんではなく、ブラジルの音楽家、シコ・ブアルキのこと。
シコ・ブアルキは歌手でありながら小説も手掛け、その『ブダペスト』という小説がなかなか面白かった記憶があります。主人公はまさに有名人に代わって本を代作するゴーストライター。今、現物が手元にないので、確認することができないのですが、作中ではゴーストライターの世界大会などというのが出てきて、他人の名義のもとにかえって高い生産性をあげてしまう書き手の心象風景が幻想味たっぷりに書かれていたような…。「他人」の「自伝」を書いて、それがベストセラーになって煩悶する…という、ロマン派的な「独創性」神話の現代的な問い直し…
これ、となりまちの図書館で借りて読んだのですよ。これを書くために、車で出かけて確認してもいいのだけれど、今日は月曜で休館。明日も、他に買い物の用事もないし、手もと不如意の身としては、ガソリン代を節約しなければ…文庫になるようなことがあったら、まちがいなく「買い」の一冊。
Takashi Niigaki: Invention or Inversion III - YouTube