俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ひきつづき大岡昇平『成城だより』

ところで、最近イエロー・マジック・オーケストラなるグループ、東京を席捲しつつあり、わが家へ来る 情報誌は、角川書店の「バラエティ」のみなれど、四月は二枚のLP売上トップと第四位、以来二ヵ月常にベストテン中にあり、第一位「パブリック・プレッシュア」は、欧米をぶって廻ったライブ録音盤、「ソリッド・ステート・サバイバー」は赤い中国服を着て、男女の等身大の人形をかかえている写真がジャケットになっているのがみそ。十二台のシンセサイザーを連結してコンピュータにて操作し、へんな音を出す。ニューミュージックなんてもはや古い、とのことなれば買ってくるとなかなかいける。ポップの如き音の豊かさなけれども、透明を目指して、ふしぎなリズムと旋律あり、寄席芸的機智あり。(大岡昇平『成城だより 上』、講談社文芸文庫、2001年、96~97頁)

 

 大岡昇平『成城だより』、上巻のみだいたい読んで、図書館へ返却しました。時間があればまた借り直して読んでしまいたいと思いますが、ポピュラー音楽への言及は大体わかったので、もういいか…という気もしています。

 上掲のイエロー・マジック・オーケストラへの言及も、新し物好きの大岡氏らしい一面がのぞきますが、この後、大岡氏、坂本龍一氏が、大岡氏の旧知の編集者の令息であることを知って「ゲッ」となり、その編集者に電話する、などという場面が出てきて、YMOの登場というのは、実は一面できわめて文壇的な事件だったのだとも再確認。

 下巻をぱらぱら見ますと、他に、ジミ・ヘンドリックス村八分ローリングストーンズ、クラッシュなどの 名が散見され、何でも息子さんの推薦でそうしたレコードを買い求めていたようで、まあ、『野火』の作家がロックの内部にどっぷりつかって村八分やクラッシュを自発的・積極的に聴きまくっていたともちょっと考えられず、あくまで作家による現代風俗リサーチの一環と思われます。

 図書館、大好きですが、ちょっと離れてて、冬場、あんまり行けないのですよ。冬はもっぱら自宅に買いためた本をやっつけるのに費やすことになりそう。

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動画は、YMOでなくNHK教育でやっていた若者番組『YOU』のテーマ曲。坂本キョージュの当時の代表的なお仕事との一つとして記憶しています。