俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

あの娘がつくった塩むすび

「受験のために夜汽車で東京に向かった。青森をだいぶ過ぎたあたりであったろうか、がらがらの客車に中卒者たちが四人、隣の席にいて、『高校にいったって何の役にも立たないんだ。しっかりはたらいてカネを稼ぐのが大事なんだ』としゃべり合っていた。すでに始まっていた集団就職の一団だったのであろう。互いに励ましあうような、しかし不安を丸出しにした、その幼い会話を聞いていて、私はある種の感動を覚えていた。一五才から大都会の片隅をはいずり回るような生活に入らなければならないこの少年たちとくらべると、受験参考書と首っぴきであった自分は、つまらぬ存在であるとつくづく感じた」(西部邁『寓喩としての人生』、1998年、徳間書店、117頁)

 震災のニュースが今日も続いています。東北地方は(東北地方だけに限った事ではないかもしれませんが)安価で良質な労働力の供給源として日本の戦後復興を支えました。いつか故郷に帰って親孝行することを夢見て、夜行列車に乗って上京してきた純朴な少年少女たちが、僕たちの知っているこの国を作り上げました。

 その「東北」が、打ちのめされ、涙を流しています。地元の商店街でわずかばかり募金をしてきました。でも、それが、目の前で暖かいおにぎりに化けて、羽根が生えて被災地へ向かって飛び立っていかないのがもどかしくて仕方ありません。


YouTube: あの娘がつくった塩むすび/藤正樹