俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

平尾昌晃「おもいで」


YouTube: おもいで-平尾昌章/平尾昌晃 1965

ロカビリー歌手としてブレイクし、「星は何でも知ってる」「ミヨちゃん」などのヒットをもっていた平尾昌晃さん。ふとした間違いで拳銃不法所持事件を起こしてしまい、一時、仕事を失いました。茅ケ崎の実家へ帰り、失意の日々を送る平尾さんのもとに、ある日ファンレターが舞い込んできます。消印は札幌。なんでも、札幌のラジオ局ではマーちゃんの「おもいで」が毎日流れ、大変な人気。カムバックしてくれたんだね、おめでとう!といった内容。たしかに「おもいで」は自分の曲だけれど、それはずいぶん前の曲。これは何かの間違いではないのか…

 じつは札幌のラジオ局のディレクターがお気に入りのこの曲を番組でかけたところリクエストが殺到して、大変な話題になっていたというのです。やがてレコード会社から呼び出しを受けた平尾さん。こんなことを告げられます。この「おもいで」を新人の布施明に唄わせようと思う。歌手としてカムバックできるとばかり思っていた平尾さんは一瞬、目の前が暗くなります。しかし、こう告げられたのです。この「おもいで」を聴くと平尾さんは作曲がすばらしい、これからは作曲家としてやってみる気はありませんか…

 人間万事塞翁が馬、といいます。塞翁の馬が逃げて困ったことだと思っていると、北方の駿馬を連れて戻ってくる。喜んでその馬に乗った息子は落馬し、足を折ってしまう。しかしそのために兵役を免れ、生き永らえる…平尾さんのこのエピソードも「人生は禍福あざなえる縄のごとし」を地で行く昭和歌謡史の逸話です。