俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

小泉今日子はブギウギブギ

 自身は楽器も弾かず作曲もせず、普段はTVのコマーシャルで顔をよく見るだけ。そういう人が実在するのかどうかすら怪しくなった頃、ときたま映画で個性的な役を演じ、これまたときたま歌手として新譜を発表する。自らのパブリック・イメージを適切に管理することによってコンスタントな利潤を確保するという賭けに勝った稀有のキャラクターが、いうまでもなく小泉今日子さんです。CM出演だけでもじゅうぶん食べていけるだろうし、こういう有名人ってふだん何してるんだろうなあ…というこちらの下世話な関心を狙い済ましたように、ある日届けられた曲がこれでした。

小泉今日子小泉今日子はブギウギブギ」

なんてったってアイドル」から何年経つのでしょうか。ヘッドアレンジだけで吹いてるんじゃないかと思われるのびのびした管楽器隊のフォービートのブギに乗って、宵の口の風に吹かれて夜遊びに出かける自分自身を歌ったもの。目黒あたりに住んでそうな金と暇のある元おねえさんおにいさんたちの飲み会風景ですね。飲む酒がビール、焼酎、ワインというから決して「セレブ」(いやな言葉だね)たちではないんでしょうけど、名のある物書き、役者、ピアノ弾きなんかが都会の真ん中で飲んで騒いでる風景ってこんなものなのかな。あなたの話、親身になってきいてあげてるけど、明日になったらきれいに忘れてるのよ、という表面的な交際、もとい水のごとく淡い交わり。都会人てそういうもんなんでしょうけど。

作詞はElvis Woodstock氏となっていますが、歌入れの際の風景を公式サイトで見ると、こりゃあリリー・フランキー師匠です。どうりでこの飄々とした感じですか。キョンキョンの周りの人たちって知的流行に敏感そうだね、というパブリックイメージが、逆にこういう人的ネットワークを維持/管理していくことを可能にし、それがさらに新たな企画を生み出してゆく、という絵に描いたようなヒップ・キャピタリズム、の産物がこの曲。それを200円出してiTunesで買っちゃう僕は、やはりキョンキョンに甘すぎるんでしょうね。うん、ファンってそういうもんですから。