喧嘩のあとでくちづけを
なかにし礼作詞、中村泰士作曲、森岡賢一郎編曲、いしだあゆみ「喧嘩のあとでくちづけを」。先日から言及している『青春歌年鑑'70』に収められています。以前取り上げた辺見マリ「経験」もこの盤の収録。でもって、いしだあゆみさんのコレは、「経験」ほどじゃないですが、とてもセクシー。やはり香水の香りのする昭和40年代歌謡です。「私は弱い弱い 女と知ったから あなたのそばでなけりゃ 生きてゆけないの」。この、「私は弱い弱い~」の部分の、なんというんでしょう、なよなよとした音符の動き方、これが僕の考える歌謡曲のひとつの原風景です。華奢な身体をお洒落なワンピースに包んで、エグみのある声で歌ういしだあゆみさんの姿が眼に浮かびます。それにしても情景設定がオトナ。痴話喧嘩のあとのくちづけ。鏡にルージュで書いた悪口。この世界観は、荒井由美さんとか中原めいこさんとか、あとあとまでずっと引き継がれていると思います。