俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ひとり寝の子守唄

広辞苑を引きました。

どうきん【同衾】一つの夜具の中に共に寝ること。特に、男女の関係にいう。ひとつね。ともね。

先日、あがた森魚さんの「赤色エレジー」について書きましたが、その数日後、林静一『赤色エレジー』(小学館、2000年)が届きました。あがたさんが解説を書いておられて、このマンガは『ガロ』に連載され、1971年のお正月ごろ単行本化されたようだ、とあります。これに霊感を受けて書かれたのがあがたさんの曲なのですね。マンガ家志望の青年と、印刷会社のようなところでトレースをして働く女性との同棲生活を描いたもの(らしいですね、まだ全部読んでません)。その中に「もう一つふとん買おうね」というセリフが出てくるんですね。主人公の男女は一つの布団に、まさに「同衾」しています。広辞苑が示唆するとおり、ひとつの布団で寝る二人は男女の関係なんでしょうが、貧しさから小さな布団に一緒にくるまって眠る男女の関係って、必ずしも性的なものがすべてじゃないと思うんです。寒い冬の夜、手を握り合って、幼児めいた言葉を交わしながら眠りに落ちるときの、なんとも言えないわびしさや、うれしさや、なつかしさみたいなものって、あると思うんですよ。

「兄さん寒かろ」「お前こそ寒かろ」「これハーンの『鳥取の布団』だよ」「クレオール文学の読みすぎだよ」「明日、少し本、売ろうかな」「いや、もう一件、塾のバイト探すよ」ムニャムニャ…

…っていう感じの文学オタクの若い男女の同棲生活を描いた連載マンガがあったら、絶対毎号読みますね。

加藤登紀子さんの「ひとり寝の子守唄」は、あがたさんの「赤色エレジー」と同じ『青春歌年鑑'70』に収められています。70年安保がどっちらけの敗北に終わりつつあった当時。これって、やはり、お登紀さんが、運動で逮捕されて獄中にあった旦那さんに向けて歌った歌なんですかね(注記:今調べると、この曲のヒットは旦那さんの逮捕前にヒットしてます)。ひとりで寝るときは、ひざ小僧が寒いだろう。女の子を抱くように、あたためてあげなよ。この詞とメロディ、時代を超えて、安アパートの冷たい万年床で寂しい眠りにつく独り者の胸に届きます。いや、ひとりで眠るのも、そんなに悪くないですよ。

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