俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

オーネット・コールマン『クロイドン・コンサート』

「ジャズ」対「ジャズ以外のブラック・ミュージック」、などといったことを最近書いていますが、この対立の図式も、最近はもう存在しないんじゃないですかね。ジャズしか聴かないジャズ・ファンって、今どれくらいいるんでしょうか。逆にジャズを絶対に聴かないブルーズ・ファンとか。いないんじゃないですか。

ただ、ジャズしか聴かないのが悪い、と言ってるわけじゃないんです。ジャズだけを追究している人って、やはりそれなりに深い知識を持っていて、若い頃そういう人たちに親切にいろいろ教えてもらいました。あっちこっちのジャズ喫茶、思い出深いものがあります。

今、ラジカセで鳴っているのはオーネット・コールマンの1965年のイギリスでのライヴ『クロイドン・コンサート』。数年の引退の後、オーネットがカムバックの場所に選んだのがイギリス。しかし音楽家のユニオンとすったもんだがあったらしくて、すんなり公演の許可が下りなかったようです。この盤の一曲目も、今聴くとちょっと意図のわからない室内楽が収められていて「???」となりますが、今、アマゾンの商品紹介のページで調べると市川某さんの解説が載っていて「 このアルバム、1曲目は飛ばして2曲目から聴いていただきたい。というのも、1曲目はイギリスで演奏する条件を満たすため、オーネットの曲を地元の室内楽団が演奏しているトラックだから」とのこと。なるほどね。2曲目の「サッドネス」からはオーネット、デヴィッド・アイゼンソン(b)、チャールス・モフェット(ds)のトリオの演奏がたっぷり聴けます。一聴してオーネットとわかるアルト・サックスの朗々たる咆哮。さらに引退中に習得したヴァイオリンやトランペットまで。冒険的でありながら、しっかりした芯というか、決してブレない歌心がこもっています。聴き応え満点です。

ジャズ喫茶の暗がりで、ああ、『クロイドン・コンサート』、オーネットがヴァイオリン弾いてるやつ、あれ最高だよね、と語ってくれた師匠は今は天国にいます。真冬になると、部屋を暖めて、ひとりじっくりこの盤を聴きたくなります。