俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

西島三重子「池上線」

あ-、西島三重子「池上線」。iTunesStoreのジニアスというのはアマゾンのおすすめみたいな機能で、ある楽曲を買うと、関連するものがサイドバーに表示される機能です。りりィさんか何かを再生してたらコレが。この曲は、CDの山を整理すれば出てくるはずなんですが、買ってしまいました。

僕は東京に住んだことがないので、首都圏の鉄道網のことをあまり詳しく知りません。以前、月に何度も仕事で上京しなければならなかったとき、開いた時間を利用していろんなところに行ってみたんですが、池上線にのることはなかったですね。

この曲の詞の印象的な一節は、「いくつ駅を過ぎたのか 忘れてあなたにきいたのに じっと私を見つめながら 『ごめんね』なんて言ったわ」 。この、何というんでしょうね、お付き合いしてるうちに、抜くも刺すもならない状況におちいるときってありますよね。そんな時って、一緒に居るんだけど、自然と双方とも口数が少なくなって、ふとなにげなく口にした一言がきっかけで、相手が思いつめたように黙り込んでしまったり。そんな場面なんですかね。ガタゴトと揺れる電車の中、「次は何駅?」って尋ねただけなのに、この歌の彼氏は不意に絶句して、「…ご免ね」と一言。何があったんでしょう。

僕はですね、あんまりそんな経験ないんですけど、一度、女性をお誘いしてきれいなお店に行ったときのこと。ああいうときは注文する飲み物も気をつけないとダメですね。黒ビールを注文して呑んでたら、「…なんか、お醤油飲んでるみたいですね…」と言われてしまって、それで気まずくなってしまいましたね。あれは失敗だったなあ。

いや、これはそんなそそっかしいデートの歌じゃないですよ。フルーツショップだけが明かりともす夜更け、改札口を出て、商店街を抜け、踏切を越えたところで、いつまでも待っています、と告げる主人公を突然、ひしと抱擁する彼氏。これがすべての終わりと言うのですから、なんとあっけないこと。去ってゆく彼の後姿が涙ににじみます。池上線が走る街に、あなたは二度と来ないのね。70年代の若者らしい、真面目な男女交際の終わりを歌った歌です。