俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

岩崎宏美「シンデレラ・ハネムーン」

岩崎宏美さんの最高傑作って、コレじゃないでしょうか。阿久悠作詞、筒美京平作・編曲「シンデレラ・ハネムーン」。

もうずいぶん昔、最初の大学に通っていたころですが、自主制作映画の上映会で、長崎俊一監督の『ハッピーストリート裏』という16ミリ映画を観ました。もうあらすじは覚えてないんですが、低予算の自主映画にしては、ずいぶんよくできたハードボイルド映画だった記憶があります。確かそのなかで、この曲が使われていたんじゃないでしょうか。

真夜中までには帰宅しなければならないシンデレラ。新婚夫婦が旅をしながら愛のいとなみに専念するハネムーン。この二つの名詞をくっつけた撞着語法的なタイトルです。時間が来るまで、心ゆくまで愛し合わなければならない、なにやらわけありの恋人同士の逢瀬を歌ったもののようですね。「日ぐれに始まるシンデレラハネムーン 夜ふけに別れるシンデレラハネムーン」。阿久悠さんの詞がいやおうなく性的な連想をかきたてますが、それに負けずセクシーなのは京平先生の作るサウンドですね。イントロからしてほんと、何が始まるんだろうというスリルいっぱいです。ストリングスとホーンをぜいたくに使っているうえに、例のミヨミヨと鳴るシンセ。何度聴いても飽きません。

詞のことをもう一点だけ言うとすれば、シャッターおろすばかりの店先で、花など買ってふざけたふりをする、という一節が印象的。愛のいとなみを終えたばかりのほてりを身体に宿したまま、深夜のフラワーショップでたわむれにバラなんか何本か買って、「おねーさん、きれいだから、一本サービスしますね」なんて店員さんに言われて、はしゃいじゃったり(これ、どなたかのマンガの一場面ですね)。阿久悠さん、この詞ではテクニックを全開にしてる感がありますね。

いやもう、岩崎宏美さんの三枚組ベスト、こころの栄養です。人生の教科書です。ほんと、家宝ですよ。