俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

中島みゆき「狼になりたい」

中島みゆきさんのコアなリスナーの皆さん、すみません。僕、よく理解できないまんま、この曲を語ろうとしてます。

大ヒットじゃない曲とか、LPに入ってた曲とか、僕、そんなに知らないんですよ。でもみゆきさんの主要曲って、たとえばラジオの深夜放送から、TVドラマの背景から、ファンだというかたがた以外の人々の耳にも確実に届いていたと思うんです。

たとえば「狼になりたい」。これ、たまたまエアチェックしたFM番組かなんかでかかってた曲ですが、あまりに素晴らしい曲で、この曲の部分だけ繰り返し聴きました。

夜明け前の吉野家。化粧のはげたシティ・ガールと、ベイビー・フェイスの狼たち。買ったばかりのアロハは、土砂降り雨でよれよれ。ビールはまだか。もう夜が明けちまうよう。これって、くそ面白くもない毎日をやり過ごすための馬鹿騒ぎの一夜がもう終わっちまう、っていうような、そんな場面なんでしょうかね。いまいち設定みたいなのがわからないんですが、みゆきさんのコアなリスナーさんのあいだではどう言われてるんでしょうか。

僕が好きなのは「あんたも朝から忙しいんだろ 頑張って稼ぎなよ 昼間おれたち会ったら お互いにいらっしゃいませなんてな」というくだり。日が暮れてからバイクや車で我が物顔に遊びまわる狼たちも、夜が明けたら、また商店の店員さんだったり、ウエイターさんだったり、オレたち、何だかんだ言って結局、客商売だからさあ。って、そういう感じですよね。

みゆきさん。北海道では名のとおった女子大のご出身で、ご自身は化粧のはげたシティガールだったこともなければ、ベイビーフェイスの狼のガールフレンドだったこともないのではと拝察いたします。そうであっても、鋭い文学的洞察力があれば、ちゃんとそういう世界を歌にできるっていう、そこが音楽のマジックですよね。フォークのスタイルでも、こんだけのことが歌える。初めて聴いたとき実にショックでした。実際のベイビーフェイスの狼たちはフォークなんか馬鹿にして、きっとクールスとかを聴いてたはずですが、クールスやブラックキャッツとあわせて聴くと、ほんと興味深いですよ。

1979年の『親愛なる者へ』収録。生ギターの弾き語りをベースにしながら、そこにところどころラウドなバンドサウンドがかぶって徐々に盛り上がるアレンジ(石川鷹彦さん編曲)がまた、ダイナミックでカッコいいです。