俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

あいざき進也「君のハートに火をつけて」

ハートに火をつけて、と言うのは、もともとはドアーズの曲の邦題です。で、あいざき進也さんの「君のハートに火をつけて」。ドアーズの曲は、音楽的には、郷ひろみさんの「花とみつばち」のイントロのフレーズに化けてしまってしまってますが、このあいざき進也さんの曲は旋律やアレンジではなく、「ハートに火をつけて」という、この絶妙な邦題からセンチメンタルな曲想を引き出すことに成功しています。

早くしないととられてしまう

他の男と踊ってる君

みんなの前で奪ってみせる

君のハートに火をつけて

急に美人になって、他の男の子の恋人になってしまいそうな女の子。嫉妬に駆られてじれる主人公。性急に燃え上がる少年の恋心を、あいざきさんの繊細な歌声が、「ア~、ア~」と悶絶しながら歌い上げます。ツイストのリズムに乗ってあおりにあおるホーンセクション。70年代男性アイドル歌謡の白眉です。

しかしなんですね、言われてみれば確かに、このコンセプト、のちのチェッカーズ「神様HELP」に流れ込んでいる気がしますね。「恋のリクエスト」が「涙のリクエスト」に流れ込んでいる、というのに負けず劣らず、この類似は明瞭だと思います。さて、それを「影響」と呼んでよいか?そもそも「影響」とは何なのか?XがYに影響を与えた、というとき、実際にはXがYになにかをしたのではなく、YがXに何かした(真似る、引用する、リスペクトする、剽窃する等々)のではないのか?土田知則『間テクスト性の戦略』(夏目書房、2000年)をもういっぺん読み返してみます。