俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

渚ようこ「カスバの女」

夏季休暇から帰ってきました。

実家へ帰ったら思いがけない用事が待っていて、バタバタと落ち着かない休暇になってしまいました。それでも、何日かは何もしない日があって、骨休めにはなったと思います。

実家には、親戚から新鮮な卵が送られてきていて、毎朝のご飯が楽しみでした。夏の早朝、すっきりと目が覚めて、酔いも完全に抜けたさわやかな空腹感を感じて、台所で目玉焼きを焼いて、白いご飯をほおばった時の何とも言えない幸福感。ハムかベーコンがあればもっと良かったでしょうが、塩コショウを軽く振ったふつうの目玉焼き、十分おいしかったですよ。

夏休みにはあれもしよう、これもしようと考えるのですが、たった8,9日で洋書を何十冊も読めたりはしないので、まあ、なんにもしない普通のお盆でしたね。ただ、映画のDVDを何本か観ました。

前にもちらっと書きましたが、僕は映画が大の苦手です。何がダメかというと、ひとつには、あの長さ。パッケージを見て「133分」とか書いてあると、それだけで倒れそうになっちゃいます。若い人に教えたりしてると「映画が苦手」とばかりは言ってられなくて、最低限のものを買ったり、BSで録っておいたりするんですが、ふだん帰宅したら疲れてて、2時間以上も集中して画面を見る気になれなくて、観てないものがすごく多いんです。

今回はいろいろ用事もあったけど、10日足らずの間に4本観ました。これは自分としてはかなり頑張った数字です。リストは以下のとおり。

灰とダイヤモンド」(アンジェイ・ワイダ、1957年)

永遠と一日」(テオ・アンゲロプロス、1998年)

マンダレイ」(ラース・フォン・トリアー、2005年)

「1953年の冷たい夏」(アレクサンドル・プロシュキン、1987年)

まあ、どうということのないリストですが、「1953年の冷たい夏」、初めて観ました。ははあ、これが噂の…。スターリンの死去した1953年、ロシア北方の離れ小島の流刑地に、恩赦で刑務所を出てきた強盗団が押し入る、という話。流刑地といっても、そこにいるのは港湾長と民警ひとり、わずかな村人。政治犯はたったの二人です。そのうちの一人、「くず」と呼ばれ、無能で怠け者だと思われていた政治犯が実は練達の銃の使い手で、隙をついてまず6人の強盗のうちの一人を倒し、銃を手に入れ、バッタバッタと悪党どもを倒していく…という展開。以前、さるかたが東映ヤクザ映画の影響を指摘していて、ほお、と思ったことがありした。ヤクザ映画も詳しくないので、細部がどう、という議論は僕にはできませんけど、やっぱ深作とか観てるんでしょうかね、この監督。

ただ、重い映画ばかりでしたので、最後は音楽のDVDで休暇を締めくくりました。実家の本棚を見たら、あ、ここにあったか渚ようこの新宿でのリサイタルをおさめたDVD。全編いいんですが、時間があまりなかったので、好きな曲を飛ばし聴き。高橋ピエールさんのガットギターだけをバックに歌う「カスバの女」。いや~、粋です。銀のドレスに左胸の赤いコサージュといういでたちの渚ようこさんの身体に、花を咲かせずに散っていった数知れない過去の無名の歌謡シンガーの魂が宿ったような、そんな一曲です。

今回は思いがけない用事で数日つぶれましたけど、夏休みは普段観てないDVDを観るというのもなかなか悪くないですね。今晩は『パン・タデウシュ物語』観よう。