ロング・ヴァージョン
昔々、普通の会社にちょっとだけ勤めていたことがありました。ちゃんと勤まっていれば、今もずっとあの会社にいて、結婚して、家庭を築いていたかもしれませんね。
先輩たち(男の人もいたし女の人もいました)とドライヴに行ったりした思い出があります。そんな時、「お前も何か好きなテープ持って来いよ」なんて言われて、アンソニー・ブラクストンを持って行ったりして、大失敗だったり。あの時は、「う~ん、お前、どっかみんなとズレてるな」なんて言われたんだったかな。
当時、そういう先輩たちがカーステレオで聴いていた音楽って何だったのか、たまに思い出すことがあります。会社の先輩ったって何人もいたから、そりゃ人によっていろいろだったでしょうけど、僕の印象に残っているのは杉山清隆&オメガ・トライブだったり、稲垣潤一さんだったりします。女の子を助手席に乗せて、海に向かって走っていく時に鳴っていても、ぜんぜん違和感のない、当時のおしゃれな音楽。
あれはどういう世界だったのかなあ?iTunesStoreで稲垣潤一さんが買えるので、試しに「ロング・ヴァージョン」を買ってみました。はあ、こういう歌詞ですか。
シングル・プレイのつもりが
いつか気づけば ロング・ヴァージョン
思いとうらはらな指が
君の髪の毛かきあげる
遊びでつき合って、飽きたら適当に別れるつもりが、なんだかそうも行かなくなってきたぞ、という世界です。当時の僕にはわかんないはずです。
陰旋律のボサ・ノヴァという、格段に日本人好みの曲調に、この歌詞ですから、おしゃれな先輩たちが夢中になって聴くはずです。いや、悪く言ってるんじゃないんですよ。カーステレオに持って行きたくなる、いい曲です。
その後、それら先輩たちとお会いする機会もありませんが、どうしているんでしょうね。みんな、えらくなってるんだろうなあ。結局僕は勤まらなくて辞めましたけど、皆さん、最後の最後まで親切でした。