俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

本を読む青年(音楽ブログ休止中です)

昨日は山口昌男さんと自分を引き比べるようなことを書いてしまいましたが、もとより僕はずっとスケールの小さな若者でしたから、いきなりアフリカに講師として赴任するとか、そんな話ではないんですよ。僕が思い出すのはもっとささやかなことです。本の大量購入というと思い出すのは、二度目に大学に入学したときの春ですね。

その年のその大学の卒業生が教員採用試験に合格して、県のずっとはずれの村に赴任していくとき、生協の書籍部で文庫本を100冊注文して購入して旅立っていった、といううわさを聞きました。今と違ってインターネットで本が買える時代ではなく、忙しい教師になってしまうと、大書店のある県都へ出てくることもそうたびたびはできない。でも、卒業しても、知的になまってしまわないよう、本は読み続けて自己研鑽に励みたい。そんなまっすぐな青年の気概が伝わってくる、とてもいいエピソードでした。小さな大学だけど、そんな素朴な若者たちが学ぶ、本当にいい場所。こういう場所でなら、僕も、うんと勉強に打ち込める。そう思いましたね。

でも、あの頃は本当にお金がなかったですね。古本屋で100円~200円の文庫本を数冊手に取ると、もう500円を突破してしまう。どれを棚にもどすか、1時間迷ったりして、店主に「いいかげんにしてください」と叱られたりしたこともあります。

生計を立てるために何軒かの学習塾でアルバイトをしましたが、ある時、夏期講習で朝から晩まで働いたバイト代を受け取って、バス通りの本屋さんにふらりと立ち寄りました。文庫本と新書本を10冊まとめ買い。せいぜい7000円ぐらいの出費でしたけど、100円の文庫本を買うかどうか迷う生活をしている苦学生にとっては、あれはとてつもない贅沢だったなあ。レジに立っていた50歳くらいの店主さんがにっこり笑って「ありがとうございます」と言った瞬間のことは、ほんと今でも忘れないですもんね。

それから比べると、ビールを飲みがてらアマゾンのサイトを覗き、「これも買っておこう」と簡単に注文してしまう自分は、ちょっと雑になってしまったなと思います。苦労して買った本を、バイトの合い間に夢中になってむさぼり読む、そんな日々のことを時々思い出さなくてはね。懐かしいです、若かった頃の僕。