俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ひらく夢などあるじゃなし(このブログをいったん終了します)

期間限定で始めたこのブログの投稿が、これで100個目になります。最初の投稿をごらんいただければわかりますが、最初から「夏ごろまで」、というつもりでした。そろそろ6月。夏がやってきます。このブログをいったん終了することにします。

このブログの副題は、非文法的なI ain`t got no right to sing the blues.というもの。標準英語ならI don't have any~となるところを、あえて黒人ブルーズ風にしました。否定辞が二つ入っていると打ち消しあって肯定になる、というのが学校英文法の常識ですが、どの言語でもそうだというわけではなくて、ロシア語だと、「何も知らない」がНичего не знаю.(「知らない」のまえにnothingにあたるНичегоがくる)となるのを知ったときには、「なんかブルーズの歌詞みたいだな」と、ずいぶん当惑しました。

これ、日本語ではどうかというと、有名な「お座敷小唄」の歌詞の問題が思い浮かびます。

富士の高嶺に降る雪も

京都先斗町に降る雪も

雪に変わりはあるじゃなし

とけて流れりゃみな同じ

となるべきところを、たとえば奥村チヨさんは「雪に変わりはないじゃなし」と歌っています。これは大変困ったことで、「違いがあるわけではない」が180度正反対の「違いがないわけではない=見逃せない違いがある」の意味になってしまっています。他の歌い手さんのヴァージョンもこれから集めてみますが、いつからこうなんでしょう。

手元にあるのは三上寛『ひらく夢などあるじゃなし』(URC、1972年4月)。そう、「あるじゃなし」が日本語としては正しいのです。「あなたもスターになれる」「ひびけ電気釜!」「痴漢になった少年」など、三上寛の激烈な自作自唱をおさめたファースト・アルバム。先日、枕元で永山則夫『無知の涙』と並んでいるのをみて、ちょっと慄然としました。そういえば、寺山修司田園に死す』のDVDはどこにしまいこんだんだろう。次の一節の痛切さはどうでしょう。

希望の前にあきらめ覚え

産れる前に死ぬこと覚え

与える前に盗みを覚え

手を組むたびに裏切り覚え

(「あなたもスターになれる」)

たまに冗談で、あと10年早く生まれたかった、とぼやくことがあるんですが、10年早く生まれていたら、こんな音楽をリアルタイムで経験できていたのかなあ。いや、荒廃した学園の真っ只中に放り込まれて、言うにいわれぬ辛酸をなめたことでしょう。平和でおだやかな学生生活を送れた分、ぼくらは幸せだったんだと思います。

こないだべろんべろんに酔っ払って友達のケータイに電話かけたら、ん?これはロシアの呼び出し音だ。サハリンに出張中でした、彼。ロシアでも日本のケータイが使えるんだから、世の中変わったよね。みんな忙しそうです。僕も忙しい。ブログも、毎日はすごく大変だなと痛感しました。何年も続けている人には本当、心から敬意を表します。僕はまあ、そこまで才能も根性もないですからね。この先、どかっとひまが出来て、ネタがたまって、気分が向いたら、また再開すればいいや。のんびり、ゆっくり行きましょう。

記事はしばらくこのままにしておきます。このページにお越しになったたくさんの皆さん、コメントをくださったのりさん、samitsuさん、本当にありがとうございました。いや~楽しかった。これがアップされる頃には、僕は札幌行きの飛行機の中。CD店に行く暇はあるかな。今日、余分にお金下ろしてきちゃった。やばいな~。ではまたそのうち。