俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

小野リサ「キエンセラ」

映画はほとんど観ない、って前にも書きましたよね。ほんと、レンタル・ヴィデオ店って年に一回行くか行かないかぐらいです。それくらい映画って観ません。ところが日曜、スーパーへ行ったついでに、となりのツタヤヘ入りました。で、借りてきたのが

『シャル・ウィ・ダンス』(ピーター・チェルソム監督、リチャード・ギア主演、2004年)

どうでもいいことですが、なぜこれを借りたか?数年前、日本テレビで土曜の夕方『シャル・ウィ・ダンス』という番組をやってましたよね。土曜の夜は勉強も仕事も放り出して、ビールを飲みながらあれを観るのがあのときすっかり習慣になってしまいました。番組終了後は、なんだか土曜の夜が物足りないのです。

もちろんあの番組は、周防正行監督の『shall we ダンス』(1996年)が火をつけた社交ダンスブームの、ひとつの遠い余波なのでしょう。ゴールデンタイムで長く続けるにはテーマが特殊すぎ、また製作も普通のバラエティよりはるかに大変そうに見えました。だから、番組がすぐ終わったことは当たり前なんですが,土曜の夕方、日が暮れるとあの番組が始まるような気がして、この週末、夕暮れ早々に酔っ払って「ダンスはまだか!」と騒いだら、老母が「酒癖が悪いねえ」と言いましたとさ。

で、翌日、急に「映画を観てみよう」と思ったのでした。しかもリメイク版を。オリジナルはもう繰り返しTV放映で観てますが、USリメイク版はたしか一回だけTVで観たことがあるきり。日本版をずいぶん忠実に再現しているな、ただ、日本とアメリカでは倫理観の違いみたいなものがあって、やっぱり奥さんがわきに追いやられたような形でのエンディングって許されないんだろうな…と思ったのを憶えています。US版では、リチャード・ギアはびしっとタキシードをキメて奥さんの職場に現れ、バラをささげ、「ダンスに行くには…パートナーが必要だからさ…」と奥さんをパーティへと連れ出します。奥さんの同僚たちが「素敵ねえ」という感じで見守る中、ステップを踏む二人。リメイク版を高く買わない人って、やっぱりあのシーンに違和感があるんでしょうかね。

僕は、悪くないと思いましたよお、この展開も。夫婦愛ってのも大事なことだからさ。ちなみにアメリカ人はこの映画をどう観たか知りたくてAmazon.comでカスタマーレヴューを見たら、五つ星38,四つ星47,三つ星23,二つ星9,星ひとつが10。う~ん、賛否両論ですね。なかには「日本版を見る前に4つ星をつけたが、観たあとは3つ星だ」みたいなことを書いている人がいます。理由は、US版は奥さんの役割を強調しすぎで、ジェニファー・ロペス演ずるダンス教師との交情が背景に退いてしまっているから。そうなのかなあ。スーザン・サランドン演ずる奥さんの情の細やかさみたいなのも、いいと思うんだけどなあ。ダンスにも、人生にも、パートナーが必要、って重要なことだと思いますよ。ちなみに同じAmazon.comで周防監督のほうのヴァージョンのレヴューを見ると、五つ星136,四つ星22,三つ星3,二つ星1,星ひとつ1。圧倒的な絶賛ですね。レヴューを読みながら泣けてきちゃったよ。

で、US版のほうは、ロペスとサランドンが自己紹介しあってフロアに出て、さいごはラテンのスタンダードでにぎやかに盛り上がって終わります。曲名は「キエンセラ」、英語タイトルは「Sway」(プシーキャット・ドールズ)。

ほかの踊り手もフロアにはいるんでしょうけど

あたしの目はあなたしか見ていないのよ

だってあの魔法のテクニックをもっているのはあなただけだから

ふたりがよろめくとき あたしは弱くなってしまうのよ

こんなセクシーな歌にあわせて踊りながら愛を確かめ合うんですから、危機は乗り切ったんでしょうね、この夫婦。で、僕のiTunesのなかでは小野リサ「キエンセラ」が鳴っています。なんでもいいけど小林旭「キエンセラ・ツイスト」ってのは死ぬまでに一回聴いてみたいです。