俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

大江戸出世小唄

邦楽のうめ吉さんについては以前書きましたが、『明治大正はやりうた』にもましてよく聴いたうめ吉さんのCDというと、これでしょうか。

なにせ、ジャケット写真が粋なんですよ。日本髪に和服のうめ吉さんが、何と言えばいいんだろう、ラジオ全盛時代のようなレトロなマイクロフォンのまえでちょっと顔を横に向けています。背景の緑と青、着物の地味な黒地、そして髪に飾った菊の花。左手の人差し指を立てたポーズがそこはかとなくセクシーです。たて書きに『うめ吉 大江戸出世小唄』の表記。

高田浩吉のヒット曲のカバーであるタイトル曲が何と言っても秀逸です。

土手の柳は風まかせ 好きなあの娘は口まかせ

ええしょんがいな ああしょんがいな

バックの編成は必ずしも純粋な邦楽ではなく、木琴が色を添えていたりします。ちゃんと譜面があるんでしょうね。曲だって要はごく初期の歌謡曲なわけだし、これって野心的な企画じゃないですか。

「都々逸」の短さは粋の極致。

初手は浮気で漕ぎ出す船も

風が変われば命がけ

思われし 人を思わぬその天罰

思うお方に思われぬ

コンサートホールよりは、狭い小屋、もっと言えばお座敷で聴きたい音楽。遊びで漕ぎ出した航海がやがて命がけになるとは、いやあ、ビミョー、もとい意味深長ですなあ。粋ですなあ。