俺にはブルーズを歌う権利なんかない

どこにも所属を持たず仕事/勉強/読書を続けています。2008年、音楽についてメモ代わりに書くためにこのブログを始めました。

ザ・シンガー

「どこまで喋ったのだったかな……」千葉潔が壁に背をもたせ、焼酎の入ったコップを口に寄せた。 「先輩は、しかしどうしてそう農民のことや宗教のことを気にかけるんですか。この前話してくれたギオルギイ・ドージャに指導されたハンガリーの農民一揆や、幕末…

雨のエアポート~雑談や世間話で馬脚が現れないように新聞くらいは読もう

佐藤 いまでも政治、経済、文化エリートで新聞を読まない人はいないはずです。軽い世間話であっても、ニュースについて何らかの見解を求められて会話が続かなければ、「その程度のやつだ」とあっさり見限られますから。今後、いくら新聞の購読者数が減っても…

楽園のDoor

佐藤 歴史の背景や文化を知ろうと思ったら、文学作品から得る情報はとても重要です。ただし、歴史小説はあくまでフィクションなので、その点には注意してほしいですね。経営者が愛読書としてよくあげる司馬遼太郎の『坂の上の雲』には、明石元二郎陸軍大佐と…

秋からもそばにいて

佐藤 選挙を意識する政治エリートは、県紙の影響力をよくわかっています。地元の県紙記者が多少厳しいことを書いても、本気でケンカはしません。池上さんは『中国新聞』と『信濃毎日新聞』以外で読んでいる地方紙はありますか? 池上 地方に行ったときは、そ…

ジレンマ

ドイツのアンドレ―エとイギリスを結ぶ重要人物は、チェコの学者ヤン・コメニウスである。彼はモラヴィア兄弟団の牧師であったが、チェコから追放され、放浪生活を送った。アンドレ―エを尊敬するとともに、薔薇十字の思想にひかれた。コメニウスはイギリスに…

発光!深夜族

発光!深夜族→昭和レジデンス→肉体関係 Part 2 改 /クレイジーケンバンド 京都の件。ほんとは暑い京都に二泊というのは自信がなかった。だから、予定が既定になってしまったあとも、何とか変更し、二泊目は懇親会に出ないで新幹線で東京まで戻り、翌朝の北…

京都の夜

「政治」はいつからか、「行為」actionではなく、ある戦略・戦術を「所有」することに置きかえられた。戦略・戦術の意図をもった行動・活動によって、制度を創造・維持・改革・革命・破壊することが、政治活動といわれるようになった。消費がアクティヴな様…

さよなら京都

一九〇九年にバザーロフは『神の建設』という著書で、宗教分野に関する新しい考えを展開し、定義さえした。彼によると、それはイデアリストの思想家や作家の言う「神の探求」とも異るものだった。「建神者」にとって神はまだ実際に存在していなかったが、人…

竹田の子守歌

われわれは遠慮もなくとうに亡くなった人々の手紙を読んでいる。そうやってわれわれはよその家族へと入り込み、彼らの事跡と人柄を知ったのである。それがどうしたというのか? 知って、好きになってしまうということのうちには、悪いことはない。そして我々…

京おんな

アカデミーは十五世紀から十六世紀にかけて、イタリアの学者たちの間で大流行した。やがてそこから大学が発達してゆくのである。N・ペヴスナーの『美術アカデミーの歴史』[…]によれば、学会だけでなく、「半ば秘密的な占星学会」もアカデミーと称したとい…

鴨川

私はときおり、どこぞの娘がどこぞの若者と出会った、そんなある日のことを思う。その日がいつの季節のことだったかも、それが起こったのがどこの土地でのことなのかも、私は知らない。娘のことも、若者のことも、見た目にどんな人たちなのかもわからない。…

忘れじの京都

I use the word artist, not meaning to attach any measure of value to what he produces, but merely to signify someone who is occupied with the arts. I wish i could find a better word. Creator is pretentious and seems to make a claim to orig…

206番に乗らずに済ませた京都について

日本のように一つの国で一つの言語に統一されている例は世界では決して多くない。国の中でいくつかの言葉が話され従っていくつかの言語が積極的にせよ、消極的にせよ習得される。リルケの場合も家庭で話したドイツ語と街できくチェコ語はそのようにして習得…

京都慕情

さて、四月に揃ってスタートする外国語の学習は秋になり、冬になるにつれ、そのテンポに乱れが出てくる。フランス語やスペイン語では柿の実が色づく頃には初歩の文法が終り、易しい読物が読めるのに、ドイツ語ではまだ文法が続いており、そのドイツ語が読物…

なのにあなたは京都へゆくの

彼は自分の脳や舌にべっとりとこびりついた日本語を非母国語化しなければならないと思った。そこで彼は外国語と恋愛しようとした。外国語大学でロシヤ語を専攻し、第二外国語でフランス語を学び、スペイン語の学習を趣味にし、英語の学習を息抜きにした。し…

京都の女の子

He thought of Bellamy, the hero of whose Socialistic Utopia had so oddly anticipated this actual experience. But here was no Utopia, no socialistic state. He had already seen enough to realise that the ancient antithesis of luxury, waste a…

京のにわか雨

「ロシアと知識人」というテーマは彼を強くとらえたので、彼はそれを論じるためにペテルブルグの「宗教・哲学協会」で、一九〇八年一一月一三日と一二月一二日の二度にわたって発言した。ロシアと知識人の間には「越すことのできぬ一線」があった。民衆の腕…

京都の恋~「銀の時代」とは一九世紀末のロシアの文芸思潮

ヴャチェスラフ・イワーノフは一九〇三年に外国から帰り、『導きの星』、つぎに『透明』と『悩める神のギリシア宗教』といったエッセーを出したが、彼はその年齢にもかかわらず、若いシンボリストたちの確乎とした支柱だった。彼はブロークやベールイとは異…

I say a little prayer~いまだにgo get some waterは落ち着かない

イギリス英語とアメリカ英語の間には文法的な違いも見られる。第4章で触れたが、アメリカ英語では疑問文・否定文を用いる際、Do you have any money? I don't have any money.のように助動詞doを用いるが、イギリス英語では、本動詞がhaveである場合 、Have…

アルフィーのテーマ~want forは「~が欠けている」の意

興味深いことに、北欧語からdieという動詞を借用した結果、古英語で「死ぬ」を意味したsteorfanの意味は限定され、現代英語のstarveとなった、wantは古ノルド語のvanta(欠いている)に倣い、最初は「欠く、持たない」を意味し、現在のように「欲する」の意…

亜米利加の朝御飯~あのときエスペラント勉強会をやらなかったのは僥倖か

1962年、まだ外国旅行が珍しい頃に、小林はヨーロッパの8か国を1か月半 エスペラントだけを使って歩きました。1974年にはポーランド、チェコスロヴァキア、ハンガリーなど東欧を、その後はスイス、英国、オーストリア、スペイン、フランスを旅行し、いつも…

Walk Don't Run~「ゆっくり急げ」とギリシア語で言う

ここで別のギリシア語を見てみましょう。 ΣΠΕΥΔΕ ΒΡΑΔΕΟΣ 最初の二文字はもうお分かりですね。続くΕΥは、単独ではそれぞれ[エ]、[ユ]という音ですが、二つ並ぶと、[エウ]になります。次の ΔはDに当たります。全部で[スペウデ]、急げという意味です。…

岬でまつわ~「ゆっくり急げ」という古い格言

まず、次の文をご覧ください。どのように読んだらよいでしょう。 Festina lente! 最初のfestinaは「急ぎなさい」、次のlenteは「ゆっくりと」という意味の語です。あわせて「ゆっくり急げ」ということです。ラテン語の格言で最も有名なもののひとつです。た…

You've Got To Have Freedom~英語は自動車の運転免許ぐらいふつうの技能になるのか

bête noire ▶noun(pl. bêtes noires pronunc. same) a person or thing that one particularly dislikes: seriatim ▶adverb «formal» taking one subject after another in regular order:point by point: foist ▶verb (foiist someone/thing on)impose an …

1987年のポキチ・ペキチ・パキチ

私はかつて留学と国際機関勤務で米国に5年滞在しましたので、米国好きの部類に入ると思います。それでも、やはり今のネットを巡る米国支配という状況は、好ましくないし健全でもないと思います。 ネット帝国主義と日本の敗北―搾取されるカネと文化 (幻冬舎新…

旅の宿

旅の宿 吉田拓郎 田舎だから、ご近所のおばさん方の顔を見たら「こんにちは」と言うようにしよう。これは励行していて悪いことは一つもない。 このところ、散歩を日課にしている。少し歩いたくらいじゃ効き目はないのかもしれないが、いきなり長い距離を走っ…

My Little Crying~ ちっぽけな悲しみは胸にしまうこと

ZELDA my little crying 気がゆるんでひとりよがりになっているかもしれない。 ハッと気づいたのは、むかし一緒に学んだ女子学生のことを突然思い出したから。別々の大学から来て、たまたま大学院を一緒に受けたけれど、ぼくは受かり、彼女は入れなかった。…

カサブランカ・ムーン

This is not an autobiography nor is it a book of recollections. In one way and another I have used in my writings whatever happened to me in the course of my life. Sometimes an experience I have had has served as a theme and I have invente…

ほんとうの、本物の夏休みへ向けて

日露戦争が終わってから一〇年くらいして、第一次世界大戦が起きます。おもにヨーロッパが戦場だったのですが、ドイツもフランスもロシアもイギリスも、戦争を始めたらすぐ片がつくと思って始めた。しかし、じっさいは戦争の内容が変わってしまって、勇敢さ…

あー夏休み~なんか落ち着かない今年の暑中休暇

小説の衰退と反比例するかのようにノンフィクションが盛んになっているようですが、そのかなりの部分は、いわば娯楽小説の代替品としての役割をになっているかに見えます。そういう役割のものもむろんあって良いし、その存在を非難すべきではないでしょう。…